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Sunrise or Die 02

モリビト

Sunrise or Die 01

デイライドを記した前記事。



 前記事からの続きになります。

 木国から紀伊国へと転じた(と言われている)ように、東西南北中央樹海スーパーワカヤマを走っていると常に森の方向からナニカの存在を感じられる。それは殆どが鹿(今回のライドでは20匹ぐらい見かけただろうか)なのだろうけど、姿かたちが見えないから、草木を分ける音ですら恐怖心を煽ってくる。
 山間に居る割には19時前まで自然光で走れたが、池原ダムを越えたところで完全に日が落ちて、いよいよナイトライド本番。この辺りから国道169号線が工事中につき通行止めになっており、しかも看板だけじゃなくて工事関係者が規制をかけていたので止むなく迂回路へ進路変更する。ルートを引いたときの淡い記憶を懐うに迂回路はもとの進路から離れていく方角に伸びている。不安になって堪らず工事関係者に尋ねると国道169号へ間違いなく合流するとの回答を得られたので、迂回路に突如現れた望まぬ坂を上り出す。
 別れ際に”自転車で行くには厳しいよ!”と我々を慮って頂いたが、今から思えば皮肉が効きすぎている。

 全体行程の半分ほどを消化したところでせっかく近くを通るのでと組み込んだ”丸山千枚田”に到着した。1枚あたりが10坪程度の小さな田圃が1000枚以上集まって形成している棚田で、無数の田圃の水面に夕映えする様などは眺望絶佳を極める。
20200607 (3)
見えればな。

 ワタクシライド恒例の見えない観光地です。千枚田は手前ェの心の中にあンだヨ。


 ここまでは前座で、ここからが真打。険しい道と書く和歌山県道43号線・44号線を、走るために走る。3桁国道の167号線と371号線の両方からも離れた山間部の川沿いを通した県道で、普通車1台がなんとか走れる幅員に加えて、あちらこちらに見られる傷んだ舗装や細かい落石の存在が悪路に拍車を掛けている。ナイトライドハイのせいなのか、およそ夜に自転車で来るべきでない道を3人は恐れずにペダルを回していく。グーグルマップに載っていて、アスファルト舗装がされている。十分すぎるほど正常性バイアスが働いているのだ。

 ふと一つのコーナーに差し掛かった時、異質な匂いが立ち込めてきた。この日も幾度か鼻を衝いた糞便の匂いとは明らかに違う。それは路傍に横たわる鹿の死骸からの腐臭だった。こんな場所だ、野生動物の死骸が放置されるのもの宜なるかなというものだが、この死骸には頭だけがない。首の真ん中あたりで断たれて頚椎や食道などの構造物が顔を(ないんですけど)覗かせている。身体のほうに目立った傷がないので、胃で発生した腸管ガスが切断面から噴出しているのだろうか。近づくとかなり強烈な匂いだ。とりあえずハイテンションに任せて罰当たりな写真を収めてその場をあとにしたが。
 冷静に思い返せばヤバい。野生動物の仕業や車との事故とは違い、明らかに”意志を持った人”の手による行為の結果だ。こんなところで異常者と出遭う予定はない。

 路面が悪く平坦路といえども速度が出ない中、ほどなくして廃屋郡が姿を見せた。ご立派な石垣を備えた家から屋根が落ちて家としての要件を満たせなくなったモノまで様々だが、一様に不気味な雰囲気を纏っている。というか住んではいないにしても使用はされていたり……?余計な想像がありもしない恐怖心を呼び込んでしまう。
 事前情報として野良かどうかはともかく犬がいると聞いていたが、確かに居た。2匹が鎖に(なんで?)繋がれていると思いきや片割れはFree(ないしはLiberty)で、走り出したかと思いきや森の中へと入ったのか視界から消えた。奇々怪々な出来事が続いたせいで精神の均衡が負の方向へと傾いてきた。
 他に道もないので険道を進むが、山を下りるに従って道路の幅と路面状態が幾分マシになってきた。そんな最中、先頭を走る私の後ろから「あー!あぶなーい!」「あぶー!あー!あーっ!」と叫ぶ声が聞こえる。眼前に鹿は居ないし……とすれば後ろで何かあったかと振り返ろうとした刹那、

Inoshishi is coming!!

 とんでもねぇ、何かあるのは俺の方だ、明らかに衝突コース。しかも文字通り脇見できるほどの至近まで右側から迫っている。人間がこんな予期せぬ事態にできることは2つ、”驚いて”然る後”叫ぶ”だ。では実行しよう。

 うううぉあぁあおああああああああああああ!!!11!1!!!!!:((; ‘ᾥ’ ;)):

 私に向かっていた野生の弾丸は、果たしてターゲットを殺傷せしめることなく森の中へと消えた。命の危険を感じた瞬間だった。ヤバすぎるぜFuckin'Wakayama.

 この夜は経験した中でもダントツに怖いし危なかった、だがそれ以上に”楽しい”のだ。3人が無事に生きている、今晩これ以上幸福なことはなかった。

 およそ50kmの険道区間が終わり、国道371号線に合流する頃には薄明の空となってしまっていた。もはや日の出など刺身定食のツマ程度の存在に成り下がっているが、出されたものなら食べておきたいし、見られるものなら見ておきたい。ていうかツマ好きだし。
 残りの行程は小さな峠を含む15kmほどの平坦路。……踏んでおくか。20200607 (7)
峠で千切ってそのまま独走。
20200607 (8)
ゴール。

 命を間近に感じられたEpic Rideだった。メメント・モリ、死を忘れるな。そして自転車に乗れ。
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Posted byモリビト

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